KADOKAWA は Windows/Mac用のRPG制作ツール「RPGツクールMV」を、2015年末の発売に向けて開発中であることを発表しました。
「RPGツクール」シリーズ最新作である本作は、ツクール史上初のマルチデバイス出力に対応。iPhoneやAndroid端末、各種ブラウザといった、様々なプラットフォームに対応したRPGを作成・公開することが可能です。
『RPGツクール』は、「誰もが簡単にゲームを作れるようにならないか」という願いを叶えるために生まれたRPG作成ソフトです。プログラム言語を覚える必要もなく、豊富なグラフィックデータや音楽データも付属しているため、アイディアさえあればオリジナルRPGを創ることができます。
そのルーツは古く、1990年発売のMSX用『RPGコンストラクションツール Dante』まで遡れば20年以上もの歴史あり。『RPGツクールMV』は前作『RPGツクールVX Ace』の発売から4年ぶりの最新作であり、スーパーファミコンやニンテンドーDSなどの家庭用ゲーム版、携帯iアプリ版もあった過去を振り返れば、対応プラットフォームの拡大は順当な進化と言えます。
パソコン用のRPGツクールといえば1997年発売の『RPGツクール95』から一貫してWindows専用でしたが、『RPGツクールMV』ではMac版を同時発売予定。Windowsと比べてゲーム日照り、たまに出たかと思えば中味がWindows版のエミュでまともに動作したなかったりと涙の河を渡ってきたMacユーザーが、ようやく泣かなくていい日が来ました。
『RPGツクールMV』で作成したゲームは、シリーズ初となるマルチデバイス出力に対応。Windows(exe形式)、Mac(app形式)、Android(apk形式)、iOS(ipa形式)の4種類のパッケージングに加えて、HTML5形式にも出力可能に。HTML5形式で出力してサーバ上で公開すれば、ウェブブラウザでプレイできるため、MacやWindows、スマホなどのデバイスに関係なく遊んでもらうことができます。
RPGの中で大きな比重を占める戦闘シーンの形式も、前作まではフロントビューしか選択肢がなかったところを、『RPGツクールMV』からはサイドビューも追加。今まではフロントビュー=ドラクエや『ウィザードリィ』風の対面式だけだったのが、サイドビュー=敵と味方パーティが左右に配置されて対峙する『ファイナルファンタジー』シリーズ風も選べるようになり、二大国民的RPGっぽいゲームを作れるようになったわけです。
さらにゲームのプレイ面では、スマートフォン対応に伴い、タッチ操作もサポート。PC系のプレイでもマウス対応しており、目的地をタッチないしクリックすることで自動で移動するため、方向音痴のプレイヤーでも迷う心配はありません。一方、従来通りキーボードやゲームパッドでのプレイにも対応しているので、「近道かと思ったら行き止まり、さんざん試行錯誤して一番遠回りが正解」という懐かしのマゾスタイルを選ぶこともできます。
そしげゲーム画面も高解像度に対応。前作(VX Ace)の544ピクセル × 416ピクセルから816ピクセル × 624ピクセルへと解像度がアップし、歩行キャラクターの基準サイズも32×32 48×48へと変更。全体的に前作の画像を縦横1.5倍した内容となり、近年の大画面かつ高解像度化しつつあるスマホ端末で「チマチマ動いて見づらい」という現象を解消する方向です。もちろん、アニメーションや表現の幅も大きく広がりました。
冒険の舞台であるマップの作成においては、上層タイルが自動的に重ね合わせが可能に。たとえば木のタイルを配置する場合、木の影に隠れない地面を表示するために透明部分が設定されていますが、問題なのが木のタイル同士を隣り合わせにする場合。前作までは、上層タイル(後に置いた木)の透明部分がそのまま表示され、先においたタイルが欠ける表示となってしまいました。『RPGツクールMV』では上下を自動で切り替えるように変更し、自然な見え方へと改善。これにより簡単に3層構造(重なりあったタイル+背景)のマップが可能となりました。
表面上のゲーム画面に現れないシステム面においては、スキルやアイテム、武器、防具、敵キャラクター、敵グループなどのデータベース項目が、前作までの最大数999から2000へと倍増。ツクラー(ゲームツクールシリーズでゲーム制作する人達の愛称)の心が折れない限り、どこまでも奥行きが深くてボリュームあるゲームを作成可能となりました。リストボックスでの複数選択 コピーも可能になるなど、データベース自体のユーザーインターフェースも改良されています。
基本的なシステムは前作「VX Ace」を継承しつつ、細かな使いやすさや表現力をアップデートした『RPGツクールMV』。何より大きいのが、やはりMacやスマホといったマルチデバイスに対応し、遊んでもらえるユーザー層が一気に広がったことでしょう。元々は『RPGツクールXP』製のフリーホラーゲームだった『青鬼』が書籍やマンガ、映画など様々な形でメディアミックス展開したように、在野のゲームクリエイター達の飛躍のチャンスが増える期待が持てます。