iPhone 5sが発売になって数週間が過ぎました。64bitにパワーアップしたA7、指紋認証のTouch ID、そしてカメラは性能や機能が大幅に向上しています。購入してからしばらくの間、スナップを撮り貯めましたので、作例を交えながらのインプレッションをお伝えしたいと思います。
全自動できれいな写真
iPhone 5sのリアカメラとフラッシュ。フラッシュは2つのLEDで構成
iPhone 5sに搭載しているカメラは、iPhone 5やiPhone 5cと比較して画素数こそ800万画素と同じですが、センサーのサイズが15%大きくなり、それに伴い1ピクセルが1.5μmになりました。一般的に画素数は変わらずセンサーのサイズが大きくなると画質の向上が期待できます。またレンズはF2.4からF2.2へと明るくなり、自動手ぶれ補正もありますので、暗いところでの撮影もしやすくなりました。
ただ焦点距離が35mm判換算で33mm(iPhone 5)から30mm(iPhone 5s)へと少しワイドとなり、iPhone 5から機種変更した場合は、慣れるまで少し違和感があるかも知れません。
カメラアプリの機能としては、パノラマやHDRは従来通りです。iPhone 5sの新機能は「自動手ぶれ補正」のほか、1秒間に10回撮影可能な「バーストモード」、白色LEDとアンバー色LEDの組合わせでより自然に撮れる「Ture Toneフラッシュ」、ビデオ撮影中にもデジタルズームできる「ライブビデオズーム」、120fpsで撮影できる「スローモーションビデオ」があります。
iOS 7の追加機能として、四角く切り抜く「スクエア」と「フィルター」があり、これらはiPhone 5s以外でも使用可能です。また他の機種でも一応バーストモードは動くのですが、連続して撮れる枚数、撮った後のバッファリングによるフリーズ現象などに違いがでます。
今回は、スクエア、フィルター、パノラマ、バーストモード、スローモーション、そしてちょっと苦手なシーンを解説したいと思います。またギャラリーに作例を掲載しましたのでお楽しみ下さい。
カメラアプリのスクリーンショット
カメラアプリを起動すると、上側(横位置で右側)はフラッシュの自動/オン/オフ、HDRのオン/オフ、イン/アウトカメラの切替え。下側(横位置で左側)には、カメラロールへ移動、撮影モード(スローモーション/ビデオ/写真/スクエア/パノラマ)切替、フィルターのオン/オフの設定があります。
写真とスクエアは上側の設定全てとフィルターが使え、パノラマは全て使えません。スローモーションと動画はフラッシュの自動/オン/オフのみ有効です。またパノラマを除く全ての撮影モードでデジタルズームも可能になっています。ただ800万画素から映像を切り抜くため、それなりに画質が低下します。
フォーカスは何もしなければ中央に四角い枠が表示され、自動的にピントを合わせます。それ以外の場所にしたいときは、指でそのポイントをタップします。シャッターは左側の丸いボタンか、本体の音量±どちらかを押せば写真が撮れます。押しっ放しにするとバーストモードになります。
フィルターの注意点
新機能のフィルター
フィルターは、プロセス/フェード/モノ/トランスファー/なし/色調/インスタント/クローム/ノアールと、8種類のフィルターをリアルタイムで効果を確認しながら撮影できます。シーンや好みに合わせて選択してください。スクエアとの併用も可能です。
スクエアとフィルター(インスタント)のコンビネーション
フィルターを使った作例。インスタント / モノ / クローム
フィルターとスクエアの組合せでの撮影中の画面と、実際の作例を3点掲載しました。注意する点としては、フィルターの効果は撮影した写真には直接反映できず、指定したフィルターの種類だけ記録しています。従ってUSB経由でPCへ取り込んだり、フォトストリーム上にある該当する写真はオリジナルのままです。
フィルターがかかった状態の写真をiPhone以外に持ち出したいときには、写真アプリの共有から、メッセージ、メール、iCloud(共有)など、書き出し先を指定しなければなりません。PCなどでフィルターがかかった写真を扱いたいときなど、少し面倒ですが、現状仕様なので仕方ありません。
パノラマの作例
パノラマに関しては、撮影方法も含めiOS 6のときと同じです。シャッターを押した後、ガイドラインに合わせゆっくり回転し、必要な範囲まで撮れればピピっと音がして完了です。
掲載したパノラマ写真は、天気の良い日、順光になる場所を選びました。青い空や緑の葉っぱがかなり濃く写ります。この発色はiPhone 5sの特徴の一つと言えるでしょう。
動く被写体にはバーストモードとスローモーション
バーストモードで撮影した9枚
前半6秒は列車、後半6秒は風車
まずは、バーストモードで撮影した写真と、スローモーションで撮影した動画を上記に掲載しましたのでご覧下さい。バーストモードはいわゆる高速連写です。走っている電車がコマ送りのように撮影できます。
スローモーションは、秒間120コマ(120fps)で記録し、秒間30コマ(30fps、通常のビデオモードも同様)で再生しますから、再生スピードは1/4になります。作例ではバーストモードと同じ電車と、風車を被写体にしました。はじめ少しだけ普通の速度で、途中からスローモーションに切り替ります。また映像に合わせて音も周波数が下がるので聞きなれない音になります。
今回どちらも手頃な被写体がなく、電車や風車にしましたが、例えばダンスやスキー、ゴルフのスイング、スケートボードと言った、動きのある被写体が身近にあれば面白そうです。
写真アプリでスーローモーション再生するエリアを指定
なお先のフィルター同様、この2つもiPhone以外に持ち出したい場合は手順が必要です。バーストモードに関しては、USBでPCと接続し写真を取り出せば一番簡単です。写真アプリ内では、バーストモードで撮影した写真は一枚だけ表示し”バーストモード(xx枚の写真)”となっていますので、「よく使う項目を選択…」から、必要な写真を選ぶと一枚一枚に分離されます。こうなるともう普通の写真ですのでフォトストリームでも何にでも送ることが可能になります。
スローモーションは、USB接続でPCに取り込んだ場合は、120fpsで録画した滑らかなビデオになってしまいます。またiPhoneでiMovieを使って編集する時も同様です。スローモーションを維持したまま書き出す方法は、写真アプリを使って、スローモーション再生したいエリアを指定します。その上で、共有でiCloud(共有)やYouTubeなど書き出し先を指定します。
全自動なだけに苦手なシーンも
ピントを合わせる場所で露出が変わってしまうAE。左は明るい窓をタップ、右は白い壁をタップ
今回ギャラリーも含め、ちょっとした枚数を掲載しました。その全てが構図を決めシャッターを押すだけ。ホワイトバランスや露出補正、ISO感度など、難しいことを考えず全自動で撮れています。暗いところも手ぶれしていません。明る過ぎず暗過ぎず、変な色にもならず、一般的なコンパクトカメラも驚きのとてもきれいな写真です。
ただ全自動だけあってパーフェクトではなく欠点もあります。最大のウィークポイントは、露出の基準はピントを合わせた部分をピックアップして決めていることです。カメラ用語で言うと「スポット測光」に近い動作です。
例えば上に掲載した夕暮れ時の写真、左は明るい窓部分をタップしてピントを合わせました。その明るさが基準になり、周囲の風景は暗くなっているのが分かります。右側は窓の周囲にある白い壁の部分をタップしてピントを合わせました。するとその明るさが基準になり、左より全体的に明るめに写ります。これだけ離れた被写体であれば、窓にピントを合わせても、周囲の壁にピントを合わせても、結果ピントの位置は変わらず、好きな明るさになる方を選べます。
しかし、下に掲載した花の写真の場合、被写体が近いだけに、少しタップする場所を変えると、大幅にピントの場所が前後に移動します。今回、中央の花にピントを合わせましたが、若干露出オーバーで色が飛び気味です。ただこれを何とかしようにも、手前か奥の若干暗い部分にピントを合わすしかなく、そうすると中央の花がピンボケしてしまいます。
もう一点、ドアのアップは、色が黒いために何処にピントを合わせても露出オーバーになります。これがもし白いドアで同じ構図なら、逆に露出アンダーになります。このような時、コンパクトカメラはもちろん、Androidに搭載しているカメラアプリでも露出補正を使って、好みの明るさに調整できるのですが、iPhoneのカメラアプリは、該当する機能が無く、打つ手がありません。多くのケースは全自動であれだけ綺麗に写るだけに残念な点です。
ピントを優先したり、特定の被写体では露出オーバーになるケース
以上、最後は少し意地悪をしましたが、トータルで見るとiPhone 5sのカメラは、豊富な機能と、難しい理屈は抜きにして、シャッターを押すだけできれいな写真が撮れます。間違いなくスマートフォンに内蔵しているカメラとしてはトップクラスでしょう。