欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機 Rosetta からチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に投下され、無事に着陸したと思われた着陸機 Philae ですが、問題が発生しています。着陸した地点は1日のほとんどが日陰の場所で、太陽光による発電量が足りず、このままではバッテリー残量がなくなり停止してしまう可能性が高まっています。
それでも ESA は日本時間14日の会見で、少しでもサンプル採取と分析を進めるため、ドリルによる地表の分析を行うことを発表し、実行しました。さらに15日朝には Philae の Twitter アカウントが、太陽光を少しでも得るため、機体を持ち上げ、角度も約35度回転させることができたとツイートしています。
(上の画像は当初の着陸イメージ図)
日本時間11月13日未明にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸した Philae は、予定した地点と違ったものの一応着地には成功、通信システムも生きていました。このため当初 ESA には「我々は2度も彗星に着陸した」とジョークを飛ばすほどの余裕がありました。ところが、実際には最初の着陸の際に機体はバウンド、約2時間もかかって約1kmほど離れた位置でいったん地面に触れ、さらに7分間漂って着地したことがセンサーの履歴から判明しています。
(赤色の部分が目標地点、青色が最終的に着地したと思われる場所)
現在 Philae がいる地点は谷の縁に位置し、1日1時間ほどしか日が当たらない場所と推測されます。発電用のソーラーパネルは無事のようですが、Philae が稼働し続けるには1日6~7時間の日照時間が必要です。このままでは残り2日ほどでバッテリー残量がなくなってしまうかもしれません。
しかも、Philae の姿勢は、3本のうち2本しか接地していない不安定な状況に置かれており、なんらかの衝撃で機体が裏返ってしまった場合はその時点でですべてが終わってしまう可能性もあります。
Philae が送信してきた彗星表面の写真
早急な対策を求められる ESA では、横転のリスクはあるものの、発射できなかった銛やフライホイールの反動などを使って少しでも発電できるよう姿勢変更することを検討中です。また、最悪でもバッテリーが切れてしまう前に Philae をハイバネーションモードに移行させておけば、数か月後に彗星が太陽に近づいて日照時間が増え、ふたたび活動を再開できる可能性もあるとしています。
ESA は日本時間14日22時に会見を開き、ドリルで地表を掘り起こし、地表サンプルの回収と分析を実行すると発表しました。その後、この試みは成功したと伝えています。
さらに日本時間15日8時ごろには Philae のTwitter アカウントが、太陽の光が当たるよう機体を少し持ち上げて回転させることに成功したとツイートしました。
この姿勢変更が少しでも多くの発電量をもたらし、状況が好転することを祈るばかりです。
追記:Philae は、日本時間15日の9時40分頃、ドリルで採取した地表のデータを含む初期観測データを地球へ送信し終えたところでバッテリーを使い果たし、ハイバネーションモードに入りました。ESAでは太陽光発電ですこしずつでも充電できないか試みますが、次に再起動できるかはわからないとしています。当初の予定では、搭載バッテリーにより2~3日の初期観測を行い、太陽光による発電が可能であれば2015年3月まで観測を続けるとしていました。
下は、映画「炎のランナー」などで知られるヴァンゲリスが、探査機 Rosetta のために書き下ろしたという曲 「Rosetta’s Waltz」