サイバーダインの作業支援ロボット「HAL」が、作業・介護支援用の装着型ロボットとして初の国際安全規格 ISO 13482 の認証を取得しました。今後早期にCEマークを取得し、欧州で事業展開を図る計画です。
2004年に筑波大学発のベンチャーとして設立されたサイバーダインは、脳から筋肉に送られる微弱な生体電位信号を検出し、装着者の意図を読み取り電動モーターで人の動作をアシストするパワードスーツ HAL を開発しています。今回作業用と介護用の腰タイプスーツがISO 13482 を取得。デモンストレーションも行われました。
認証を取得した「HAL作業支援用(腰タイプ)」及び「HAL介護支援用(腰タイプ)」は、それぞれ重量物を持ち運ぶ作業支援と、介護で人を抱えたりするための支援を行う2タイプです。腰回りに本体(バッテリー含む)と、大腿側部にアクチュエーターが備わっており、腰部の回転運動をこれでサポートします。背筋に筋電センサーがあり、力を加えた際に発する電気信号を検知してアシストを行う仕組みです。作業支援用と介護支援用との差は、作業内容の違いによるサポートプログラムの差が主な違いになっています。
動きを検知してからアシストを開始する仕組みでなく、体を動かすための脳からの指令(筋電)により動作します。「重い物を持ち上げる」という命令が筋肉に伝わると、その信号に応じてサポート力が加わり、荷物を降ろし力が抜けるとサポート力も弱まるなどスムースなアシストが可能です。
NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、介護や重作業を行う人の支援ロボットを開発するメーカーとともに技術開発だけでなく、安全性などに関しても研究開発してきました。
サイバーダインは、NEDO生活支援ロボット実用化プロジェクトの参画企業です。ISO 13482:2014はこのプロジェクトの参画企業が中心になって草案を作り、正式発行された国際規格です。
NEDOの植田文雄理事は、支援ロボットが日常生活に入り込むには安全性が求められるとし、今回のISO 13482の策定および認定は、ロボット(ロボティクス)の産業化に大きな一歩となると述べました。
またNEDOロボット・機械システム部 部長の弓取修二氏は、少子高齢化による労働力不足や生産性向上など日本が抱えている課題を解決するソリューションとして、ロボットが大きな役割を果たすとしています。その為には技術開発だけでなく、安全に有効に活用できるかを証明することが重要で、NEDOがロボットの安全性評価標準を策定したというのは大きな一歩であるとしています。
サイバーダインの山海 嘉之社長によると今回のモデルの特徴は以下の通り。
- 思った通りのアシストができる
- 補助率や作業量を自分の仕事内容にあわせて設定できる
- 腰痛を防ぎながらアシストできる
- 2.9kgとコンパクト
実生活に使用できるレベルで、今回の認証取得は世界展開するために重要な意味を持っているとしています。今後の製品開発に関しても、こういった認証を速やかに取得して、日本で開発された製品が世界展開できるようにしたいとのこと。
発表会ではデモンストレーションとして、20kgの分電盤を運ぶ作業が行われました。試験導入している大林組の作業員が、実際にHALを装着をして20kgの分電盤を軽々と運び、さらに二つ(計40kg)を同時に軽々と持ち上げました。動画をごらんください。
今回のHAL(腰タイプ)では、物を持ち上げて保持する動作だけでなく、物を抱える、重い物を背負うといった腰に負担がかかる作業のいずれにも対応できます。腰痛を防ぎ疲労度を軽減する効果もあります。
例えば、分電盤の移動作業の場合、アシスト無しでは40個移動すると疲労もたまって作業を中断しなければなりませんでしたが、HALを装着する事で、80個以上運んでも疲労がそれほど貯まらないという結果が得られたそうです。
日本国内では、当面の間レンタル(リース)での展開。その理由は技術革新の早い初期フェーズで販売(売り切り)にしてしまうと、(機能が充実してから導入したいと思う会社が多いのと)常に新しい機械を使いたいという利用者目線から。