Google がChrome OSノート Chromebook Pixel を2年ぶりにアップデートしました。
12.85インチ2560×1700 (3:2) の高精細タッチ液晶画面はそのままに、最新の第五世代Core i5 または i7、最大16GB RAM、バッテリーは前モデルから2倍以上の12時間駆動で急速充電対応など、大幅なパワーアップを果たしています。
また最新規格をいち早く導入する先導役にふさわしく、アップルの「新しいMacBook」で注目された充電兼データ兼映像用USB-C (USB Type-C)コネクタを搭載することも特徴のひとつ。
削ぎ落とし思想の新MacBook はUSB Type-Cが1ポート(とヘッドセット端子)のみですが、Chromebookの枠を広げる Pixel ではUSB Type-Cを左右にひとつずつ、通常のUSB 3.0 (Type-A) も2つ、さらにSDカードスロットも内蔵します。
Googleが独自設計する Chromebook Pixel は、Chrome OS ノートのフラッグシップモデル。
Chromebook / Chromebox といえば、Chromeブラウザと同じサンドボックス化やセキュアブートを核としたセキュリティ性、シンプルなChrome OSからくる軽快さ、Googleアカウントと結びついた管理のしやすさなどを売りに、主に Google Apps 導入企業や教育機関でシェアを伸ばしてきました。
法人向けや簡単なネットPC用途が多いことから、Chromebook (ノート) / Chromebox (デスクトップ)は安価な製品が多く、ハードウェア的にもAtomプロセッサに樹脂筐体など軽量級の仕様が一般的です。
そんななか、2013年に突如として投入された初代 Chromebook Pixel は、MacBook Proをもっと薄くソリッドにしたアルミ筐体に高級感ある表面仕上げ、中身はインテル Core iプロセッサ、12.85インチのディスプレイはユニークな3:2比の 2560 x 1700高精細かつ高輝度タッチ対応液晶など、他社の高級ノートに劣らない強烈な仕様でした。
安い Chromebookならば5台買える価格もあり、世間からは「ブラウザしか使えないネットPCにここまでしてどうする??」と困惑を招いたのも記憶に新しいところです。
しかし Googleいわく、Chromebook Pixel は考えうるかぎり最高のPCを白紙から設計することにより、Chromebook 全体の限界を引き上げ、次世代 Chromebookの可能性を示す製品。先頭の旗振り役という、文字通りのフラッグシップです。
それから2年。旗について行った他社製Chromebook の話はあまり聞きませんが、新生 Chromebook Pixel は技術トレンドを取り入れて大きく進化しました。
MacBook Pro Retinaモデルも超える高精細239ppiの3:2比タッチ画面(縦1700)は変わらない一方、RAMは4GBから8GBまたは16GBへ、プロ セッサは最新の Core i5またはi7も選択可能に、無線は802.11ac対応の 2×2 MIMOデュアルバンド、Bluetooth 4.0へ。
5Gbpsデータ転送と充電・映像出力を兼ねたUSB Type-C は左右にひとつずつ。
新MacBook 12インチは「有線アクセサリなんて使わないよな?いちいち言わすな恥ずかしい」的な態度をありありと示す片側1ポート(とヘッドセット端子)のみです が、より大型で Chrome OSなりの汎用性をアピールする役目の Pixel では左右に備えるうえ、いわゆる普通の USB 3.0 (Type-A) も2つ、SDXCスロットも備えます。
初代の弱点だったバッテリー駆動時間は、プロセッサの進化もあり大幅に伸びて12時間へ。新たに急速充電にも対応し、15分充電で2時間使えます。ほかの仕様はバックライトキーボード、高出力ステレオスピーカー、720p広角レンズ前面カメラなど。
サイズは初代からわずかに薄くなった 297.7 × 224.55 × 15.3 mm (MacBook Pro 13インチをひと回り小さく薄くした感覚)、重量もほとんど同じ1.5kg。
RAMは2倍〜4倍になった一方、SSDは32GBまたは64GBと初代から変わりません。これは1TBの Google Drive利用権3年分が付属するなどクラウドストレージが前提の Chrome OS では、内蔵ストレージはオフラインキャッシュ的に使われる設計思想があります。
先代から目立って欠けた点は、(今のところ) LTE版が用意されていないこと。またミニDisplayPort が USB Type-Cに吸収されたため、HDMIやDisplayPort出力には新MacBookのようにアダプタが必要です。(Macに AirPlay があるように、Pixel もChromecast や Nexus Player などGoogle Cast 対応デバイスに無線で画面を飛ばすことはできます)。
価格も初代からは下がり、Core i5 / 8GB RAM版は 999ドル、Core i7 / 16GBの LS (Ludicrous Speed, バカ速) モデルは1299ドル。初代でも聞かれた「Chrome OSじゃなかったら欲しかった」もますます増えそうです。米国ではオンラインの Google Store ですでに販売中。
初代 Pixel から2年が経ち、ウェブとネイティブの境界を埋める技術の普及やウェブアプリの近代化は着実に進み、Chrome OS も一部のAndroid アプリが使えるようになるなど進歩を重ねてきました。また昨年には日本国内でも Chromebook や Chromebox が買えるようになったことで、Chromeで済む範囲内ならば十二分に快適という認識も広まりつつあります。
PCゲームやコンテンツ制作など、従来のデスクトップOS向け特定アプリが必須のユーザーにとっては端から選択肢にならず、また高度なカスタマイズや常駐 ユーティリティ系など、これまでPCならできたことが意外とできない不便もあり、用途とユーザーを選ぶ点は変わりません。また「せっかく高い買い物ならば アレもコレもできたほうがいい」と考える大多数の消費者にとっては、初代より割安になったとはいえまだまだ高い買い物と言わざるを得ません。
一方で、Chrome OS が何なのか把握したうえで妥協のないハードウェアを使いたいユーザー、ただの高性能ノートならば間に合っているからとにかく他人の買わない変なものが欲しい好事家など、スーパーニッチにとってはさらに魅力が増した製品です。