編集部注: Marc CanterはInterfaceのCEO。Interfaceはモノのインターネット向けのパーソナライズド・アプリ/体験を、簡単に作るための新しいオーサリングシステムを開発している。
モノのインターネット(IoT:Internet of Things)は、最新かつ最大のバズワードであり、IT企業、製造会社、大型小売店から医療業界まであらゆる大型プレーヤーが、IoTを次の大ブームで あると宣言している。それぞれの業界が、小さな低消費電力スマートデバイスあるいはセンサーの活用方法を探りつつ、それぞれの未来製品戦略の中にIoTを 組み入れている。
業界はIoTに興奮するあまり、口角泡を飛ばす勢いのヒステリー状態に陥っている ― 例えばCiscoにいたっては、呼び名を “Internet of Everything”[あらゆるモノのインターネット]にしようと試みている。Ciscoが何かの名前を変えようとする時は(「ヒューマンネットワー ク」の時と同じように)、何か悪いことが起きるとわかっている。
Qualcommは複数のIoTプラットフォームを持ち、Intelは独自の標準を打ち出し、AppleとGoogleはその囲い込み戦争を再演している ― いずれもわれわれの予想通りだ。
かつての主要技術トレンドと同じく、IoTは、展示会やカンファレンス、アクセラレーター、ベンチャー基金、さらには地域のミートアップやDIY共 同作業スペース等、様々な機会を生み出してきた。そして、McKinsey、Accenture、KPMG以下、あらゆるコンサルティング会社が、今や IoT部門を持ちその営業している。
私にとって最大の驚きは、一般人にとってのIoTの利益が何であるか ― そしてIoTそのもの ― の明確な定義が完全に欠けていることだ。
世間にはすでにIoTに対する否定的態度が見られるが ― Google Glassとそのろくでなしユーザーに対する拒絶反応であれ、フィットネス端末の放置率50%以上という数字であれ ― 今も売れていると同時に放置されている。
消費者は、機械同志の通信(M2Mと呼ばれることもある)やクラウド自体を理解しておらず、ターミネーターに出てくるスカイネットの一種か何かだと 思っている。NSAのスパイ行為に対する大衆の反応を踏まえると、IoTの根本的課題は、平均的消費者の心理の中に基本的信頼感を植えつけることにあると 私は考える。
しかしIoTの本当の問題は、人々がこれをピカピカのおもちゃと考えていて、万能の、世界を変える、未来に備えるものであるという、その真の姿に気付いていないことだ。
IoTを単なる「もう一つのニュートレンド」と見ることは、未来の可能性を見過ごすことになりかねない。可能性はそれよりはるかに大きい ― 正直なところ私は、驚くべき可能性を持つ物事が正しく理解されずに「単なる新しいトレンドかブーム」として扱われるところを見るのにうんざりしている。
魔法のような技術が(ユーザーの活動や行動パターンに基づく)リアル世界データと組み合わさった時、そこには必ず「スマート」な未来のソリューション新時代への兆候が見られるはずだ。
分散ネットワーク環境で同期化組織化による相互運用を行う技術プラットフォームは、私のようなソフトウェア人の刺激を大いにかき立てる ― しかし、同時にこの流行語ベースの集合的ヒステリー行動が心配になることもある。
私はIoTを、あらゆる現代テクノロジーの頂点であり、オンライン技術とリアル世界の統合をようやく実現するものであると考えている。
エンドユーザーとそれを取り巻く世界のコンテキストを理解することによって、今われわれは本当の、「媒介された対話」、リアルタイムの介入と支援、日常体験のオンライン補助、そして遂には「コンテキスト対応」したアプリを作ることができる。。
この急成長する「コンテキストの時代」(ロバート・スコーブルとシェル・イスライルが同名の著書でそう呼んでいる)に関していちばんワクワクさせら れる物事が何かを、われわれはまた知らない。たしかに未来は不透明で漠然としているが、それがスマートウォッチやリストバンド(あるいはスマートホーム) に始まる一連のテクノロジーに基づくものになることは間違いない。コンテキストのある最新データを(クラウドの中の)「知能」に送り込むと、このデータが 分析されリアルタイムでコンテキストに対応した体験が生み出される。きっとそんな世界だ。
こうした体験は、モバイルデバイスとソーシャルグラフの友達、同僚、家族らと共に作られ、デジタルコンテンツのストリーミングも入ってくるだろう。それは、単なるピカピカのニュートレンドをはるかに越えるものだ。
私の頭のに中は新しいタイプのソリューションと創造体験があふれているが、IoTにはモバイルアプリとソーシャルなつながりも必要であることを私は知っている。そして、デジタルメディアとストリーミングコンテンツも忘れてはならない。
というわけで、今後IoTという言葉を聞いた時には、必ずその本来の意味を考え、たまたま何兆ドルもの価値を持った単なるニュートレンドではないことを思い出してほしい。