パナソニックは、4K対応ビエラの新製品発表会を開催しました。この中で同社の常務役員コンシューマーマーケティングジャパン本部 本部長の中島幸男氏は、地デジ特需以降販売が低迷するテレビについて、4Kで需要が回復するとの見方を示しました。
新しいビエラ、フラッグシップのAX900シリーズは、超大画面の85型、65型、55型の3サイズでオープン価格。店頭予想価格はそれぞれ、200万円前後、80万円前後、50万円前後。発売日は10月17日となります。
中島氏は「4Kビエラ史上最高画質、ダイレクト音声操作機能も搭載、使いやすさも格段に進化している」などと語りました。
テレビ販売の現状について中島氏は、
「テレビ販売は2011年の地デジ特需の反動で低迷を続けていたが、最近では大画面テレビを中心に下げ止まり傾向が見えてきた。テレビの買い換えを7年から8年とみると、来年あたりからテレビの売り上げは右肩あがりに伸びてくると予想できる。4K放送開始の2018年から2020年にかけては、東京オリンピックが起爆剤となり、800万台から1000万台市場への回復が期待されている」
と話しました。
また、回復傾向が見えてきた国内テレビ市場を牽引するのは4Kであるとし、2014年度23万7000台の予測を超えた伸びがあると説明。テレビ業界の直近の予測では、2014年度32万台へと大幅に上方修正されました。
さまざまなリサーチで4Kが予想以上にマーケットに受け入れられているとしており、中島氏は「今後、放送環境の整備にともない、ますますそのニーズは高まっていく。この伸びる4K市場でパナソニックは攻勢をかける」と話しました。
パナソニックでは5月、4KのAX800シリーズ5機種を発売し、4K動画撮影対応のデジタル一眼LUMIX GH4 や LUMIX DMC-FZ1000 、ウェラブルカメラ A500 といった4K撮影機器も投入しています。中島氏は「撮った4K動画を保存、再生できる4KのDIGAもつい先日、発表した。4Kで『撮る』『見る』『残す』を実現できるのはパナソニックだけ」とアピールしました。
機能説明を行ったホームエンターテイメント事業部の楠見氏はAX900について「ビエラの目指すものは『美しい映像』と『カンタン操作』でお客様の生活に新たな感動を加え、より豊かなライフスタイルを実現すること」とコンセプトを紹介。
AX800は、色再現性を高めた『ヘキサクロマドライブ』、暗部の表現力を高めた『暗部快調補正技術』、さまざまな映像を4Kに変換する際に必要な超解像技術『4Kファインリマスターエンジン』などで高い評価を得ているとし、「本日発表するAX900シリーズはこれらの技術にさらに磨きをかけ、ビエラ史上、最高画質を実現した」とアピールしました。
画質の進化ポイントは「明部」「暗部」の表現力、色の再現性、超解像技術の3点。
AX900シリーズでは、新たにパネル開口率の高い高輝度IPS液晶パネルを採用し、明部の表現力が向上しました。また楠見氏は高輝度LEDバックライトをパネルの直下に多数対置することで、高精細でありながら、A800シリーズの約2倍の高輝度化した点も説明しました。
新機能のダイナミックレンジリマスターについては「日差しなどの明るい映像をカメラで記録すると、非常に明るい光の部分は圧縮して記録するので、明るさも色も失われてしまう。そのため、人の目で見る光景よりもコントラストがない映像になってしまう。ダイナミックレンジリマスターはこの圧縮された映像信号から本来の明るさと色を復元。これまでのテレビでは表現できなかったメリハリのある映像を映し出す」と紹介。
次に暗部の再現性向上技術について。AX900ではバックライトをパネルの直下に配置し、映像に合わせて明るさをエリアごとに細かくコントロールするバックライトエリア制御を採用。「一般的な3×3で行われるエリア制御をAX900では5×5のエリア制御をすることで、バックライトの点灯が滑らかになり、光り方に不自然さがない、コントラストのある映像表現ができるようになった」としています。
色再現性については、AX800同様のECI98%の広色域で「加えてIPS液晶パネルの特徴である正面はもちろん、ななめ、上下から見ても色変化が少ない広視野角を実現し、ななめから見ても色彩豊かな映像を映し出す」と説明しました。
楠見氏は「AX800シリーズより搭載したヘキサクロマドライブは、赤、緑、青、3色に加え、補色であるシアン、マゼンダ、イエローの3色を色座標に加えることで、原色から中間色まで忠実に色を再現しています。これをAX900にも搭載していきます。液晶パネルは暗い部分の色再現が弱点でしたが、その暗部の色もカラーマネージメント回路により正確に再現できます」と製品をアピール。
またAX900シリーズはスーパーハイビジョン放送であらたに採用された信号規格「ITU-R BT-2020」に対応し、この規格にのっとった広い色域の映像信号を再現可能です。
進化ポイント3点目が、デジタル放送を4K高画質で見るために必要な超解像技術「4KファインリマスターエンジンPRO」。これはは従来の「4Kファインリマスターエンジン」を進化させたものです。
4Kコンテンツがまだ限られている現在、地上デジタル放送などのハイビジョン映像をいかに美しい4K映像にコンバートできるかが重要なポイントです。新エンジンでは3つのプロセスで4K映像にアップコンバートします。
- 入力された映像信号から、解像度や絵柄を判別。
- 適応型リマスター処理を行う。最適な超解像処理のために、さまざまな信号復元処理のパターンをモデル化する独自のアルゴリズムを作り上げました。太くなりがちだった細い絵柄もシャープに表現。
- 最後に適応型ディテール超解像。映像の絵柄に合わせて、ディテールが重視される部分、たとえば、模様がある部分では超解像処理を強めに、空などの変化が少ない部分はノイズを抑えます。
このような処理には非常に高い能力が求められ、AX900は高精度かつ、スピーディな処理を行うため、パナソニックではLSIを新たに開発しました。
AX800シリーズではマイク搭載リモコンで音声操作でき、AX900シリーズがさらにリモコンなしで直接テレビに話しかけるだけで操作できる「ダイレクト音声操作機能」を搭載。リモコンが手元になくても手早く電源を入れて番組選択したり、YouTube動画の再生などができるようになります。
またAX900シリーズでは、ハードディスクに録画した番組を外出先でスマホやタブレット端末で楽しめる機能がAndroidに対応。従来はiOS端末のみでした。
AX900シリーズの発売と同時に、55型(予想価格30万円)、40型(予想価格20万円)、48型(予想価格25万円)の4KスタンダードモデルAX700シリーズを投入。発売日は10月17日。AX700シリーズは画質面ではAX900より一世代劣る「4Kファインリマスターエンジン搭載」となりますが、リモコンによる音声操作が可能です。
発表会後半には、ビューティフルジャパンアンバサダーの綾瀬はるかさんが舞台に登場。「子供たちの成長する姿を見て、オリンピックを応援したいなぁと思います。スポーツ競技はすごく人の心を揺さぶって感動させることがあるんですけど、同じように演者の仕事も見ている人の心を揺さぶれるので、そういう仕事をしていきたいと思っています」と、パナソニックがスポンサー支援する東京オリンピックに向けたメッセージを残しました。